【10】分煙効果の確認方法について





近年、禁煙や分煙が定着してきています。ここでは、分煙効果を確認する環境の測定、評価方法について述べます。

●受動喫煙の防止に関する法令
2003年5月1日に健康増進法が施行され、第25条に受動喫煙防止についての努力義務が課せられています。この法は、主に建築物衛生法(旧称:ビル管理法)や労働安全衛生法にかかる場所を対象とし、分煙を推進するものです。強制ではありませんが、保健所等の指導が入る場合があります。
 
●健康増進法 第二十五条
学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店、その他の多数の者が利用する施設*を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙(室内またはこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。
この法律により、日本全国どこでも、受動喫煙対策を行わなければならなくなり、特に身近な百貨店、事務所、飲食店などで、全面禁煙、分煙対策が実施されます。その分煙効果を確認するため分煙(喫煙)場所の測定を行う際に、粉じん計、風速計を使用します。
*「その他の多数の者が利用する施設」とは、鉄軌道駅、バスターミナル、航空旅客ターミナル、
旅客船ターミナル、金融機関、美術館、博物館、社会福祉施設、商店、ホテル、旅館等の宿泊施設、屋外競技場、遊技場、娯楽施設等多数の者が利用する施設を含むものであり、同条の趣旨に鑑み、鉄軌道車両、バスおよびタクシー、航空機、旅客船などについても「その他の多数の者が利用する施設」に含まれます。
 
●受動喫煙対策の効果の確認
分煙の対応策と評価方法については、各省庁から対応策が示されておりますが、最も身近な対応策は次の2つです。
  ①「受動喫煙防止対策について」
    厚生労働省厚生労働省健康局長 健発第0225第2号(平成22年2月25日)
  ②「職場における喫煙対策のためのガイドラインについて」
    厚生労働省労働基準局長 基発第0509001号(平成15年5月9日)
 
分煙効果判定基準
分煙対策を行った場合の分煙効果判定基準は、厚生労働省健康局の「分煙効果判定基準策定検討会報告書」で提示されています。
 
屋内における有効な分煙条件
①排気装置(屋外へ強制排気)による場合
判定場所その1
(喫煙所と非喫煙所との境界)
  • (1)デジタル粉じん計を用いて、経時的に浮遊粉じん濃度の変化を測定して漏れ状態を確認し、非喫煙場所の粉じん濃度が喫煙によって増加しないこと
  • (2)非喫煙場所から喫煙場所方向に一定の空気の流れが0.2 m/s以上であること
判定場所その2
(喫煙所)
  • (1)デジタル粉じん計を用いて測定した時間平均浮遊粉じん濃度が、0.15 mg/m3以下であること
  • (2) 検知管を用いて測定した一酸化炭素濃度が10 ppm以下であること
 
②空気清浄機による場合
判定場所その1
(喫煙所と非喫煙所との境界)
  • (1)デジタル粉じん計を用いて、経時的に浮遊粉じん濃度の変化を測定して漏れ状態を確認し、非喫煙場所の粉じん濃度が喫煙によって増加しないこと
  • (2)非喫煙場所から喫煙場所方向に一定の空気の流れが0.2 m/s以上であること
  • (3)ガス状成分について適切な方法で濃度を測定し、喫煙所からの漏れ状態を確認すること(現在、その手法は確立されていない)
判定場所その2
(喫煙所)
  • (1)デジタル粉じん計を用いて測定した時間平均浮遊粉じん濃度が、0.15 mg/m3以下であること
  • (2)検知管を用いて測定した一酸化炭素濃度が10 ppm以下であること
  • (3)ガス状成分について適切な方法で濃度を測定し、その値がある一定値以下であること(現在、その手法は確立していない)
 
注)大気環境全体を視野に入れた場合の条件は、上記①に以下を追加
 ・大気の環境基準が設定されている浮遊粒子状物質濃度の1時間値が、0.2 mg/m3を超えないこと
・大気の環境基準が設定されているガス状物質のうち、1時間値があるもの(二酸化硫黄が0.1 ppm、オキシダントが0.06 ppm)は、その濃度を超えないこと

分煙環境のつくり方
分煙コンサルティング活動をされているJT(日本たばこ産業株式会社)様の
HPでは、詳しい「分煙環境のつくり方」が公開されています。

参考:JT(日本たばこ産業株式会社)様 「分煙環境のつくり方」
http://www.jti.co.jp/tobacco-world/torikumi/bunen/howto/index.html

 
測定方法
測定の目的
喫煙対策を実施する前の職場の空気環境の把握、ならびに喫煙対策の効果の把握および維持管理を目的とし、職場の空気環境中の浮遊粉じんの濃度、一酸化炭素の濃度および非喫煙場所から喫煙室などへの気流の風速の測定を行う。
 
測定の種類など
■喫煙対策の実施前
喫煙が行われている室などを対象とし、通常の勤務状態の日について1日以上
 
■喫煙対策の実施後
非喫煙場所および喫煙室などの内部ならびに非喫煙場所と喫煙室などとの境界を対象とし、通常の勤務状態の日について1日以上
 
■喫煙対策の効果の維持管理
非喫煙場所と喫煙室等との境界を対象として、3カ月以内ごとに1日以上(四季を考慮)
 
測定回数
事務室(1日3回以上)

喫煙室および事務室以外の非喫煙場所(1日1回以上)

測定点
■浮遊粉じんの濃度、一酸化炭素の濃度測定
床上約1.2 m~約1.5 mまでの間の一定した高さとする。
1室について5点以上とする。喫煙室は5点以上でなくても良い。
・気流の測定
非喫煙場所と喫煙室等の主たる開口面について、上部、中央部、下部の3点とする。
 
評価など
測定対象 基準値
浮遊粉じんの濃度 0.15 mg/m3以下
一酸化炭素濃度(CO 10 ppm以下
非喫煙場所から喫煙室等に向かう気流の風速 0.2 m/s以上
※各測定点における測定回ごとの測定値によって、経時的な変化等を把握し、職場の管理を行うこと。
※測定結果は、3年間保存すること。
 
測定機器
測定対象 使用可能な測定機器
浮遊粉じんの濃度 校正された相対濃度計または校正された分光ろ紙じんあい計
一酸化炭素濃度(CO 検知管またはこれと同等以上の性能を有する機器
風速 一般用風速計
 
浮遊粉じんの濃度の測定に相対濃度計を用いる場合は、1回の測定につき、1分間隔で連続10分間以上測定することとし、質量濃度変換係数(K値)を用いて、濃度に換算すること。
 
〔[記入例] 職場における分煙効果判定のための記録用紙〕
●測定実施者:○○○○ *青字は記入箇所
 
●測定の目的(○印)
(1)喫煙対策前の測定
(2)喫煙対策実施後に効果を把握するための測定
(3)喫煙対策の効果を維持管理するための測定
 
●測定の実施日など
実施日 喫煙状況 測定点の高さ
2005年5月9日 ・昼休みに喫煙が集中している。
・1日の全喫煙本数は、約35本である。
粉じん 1,200 mm
CO 1,200 mm
測定場所 風速 1,500 mm
カノマックスBLD 5F
喫煙室(会議室隣)
1,000 mm
500 mm
 
●喫煙室等の概略図(主要な設備、測定機器の配置)

図中に、測定点、各測定点に関する特記事項、窓の開閉状況を記し、排気装置による空気の流れを矢印で示すこと。やむを得ず、空気清浄装置を使用している場合は、当該装置の排気の方向を矢印で示すこと。
 
●喫煙許容人数(定員) (10人)
測定時の喫煙人数 (最高9人) 測定時間中の喫煙本数(24本)
 
●喫煙室等の広さ(床面積:21.6 m2  天井までの高さ:2.7 m)
 
●喫煙対策機器等の稼働状況
(1)喫煙対策機器の稼働状況
[1] 排気装置を設置している場合
・換気扇など(24時間連続運転、9:00~17:00まで運転、なし)
[2] やむを得ず空気清浄装置を設置している場合
・空気清浄装置(24時間連続運転、   :  ~ :  まで運転、なし)
(2)喫煙対策機器の処理風量
[1] 排気装置を設置している場合
・換気扇など(15 m3/min × 4台)
[2] やむを得ず空気清浄装置を設置している場合
・空気清浄装置(     m3/min ×     台)
(3)温度(28℃)、湿度(55%)
(4)前回の保守管理の実施日(2005年3月10日)
 
分煙効果の評価項目
測定場所 測定項目 1回目 9:00~10:00 2回目 13:00~14:00 3回目 16:00~17:00
喫煙室等と非喫煙場所との境界 平均浮遊粉じん濃度 0.01 mg/m3 0.01 mg/m3 0.01 mg/m3
CO濃度 1 ppm 1 ppm 1 ppm
非喫煙場所から喫煙室等へ向かう気流の風速 上:0.2 m/s
中:0.1 m/s
下:
上:0.2 m/s
中:0.1 m/s
下:滞留
上:0.2 m/s
中:0.1 m/s
下:
視覚・嗅覚によるたばこの煙の漏れ 有 ・ 無 有 ・ 無 有 ・ 無
喫煙室等 平均浮遊粉じん濃度・CO濃度 0.14 mg/m3
1 ppm
0.15 mg/m3
2 ppm
0.14 mg/m3
1 ppm
非喫煙場所 平均浮遊粉じん濃度・CO濃度 0.01 mg/m3
1 ppm
0.01 mg/m3
1 ppm未満
0.01 mg/m3
1 ppm
 
〔参考文献〕
・「受動喫煙防止対策について」
厚生労働省厚生労働省健康局長 健発第0430003号(平成15年4月30日)
・「職場における喫煙対策のためのガイドラインについて」
厚生労働省労働基準局長 基発第0509001号(平成15年5月9日)