【23】マイナス温度での風速測定について

◆ 当社の設備
アネモマスター / クリモマスター風速計は、次の風洞設備を使用して、校正および確認試験を行っています。
設備名 設備の役割
高速風洞 3~50 m/sの範囲で校正および動作確認
低速風洞 0.05~2.5 m/sの範囲で校正および動作確認
温度可変風洞 温度補償機能の動作確認
 
温度可変風洞とは、温度を変えて一定の風を作り出せる装置で、当社ではこの風洞で1本1本のセンサーの温度補償特性(5~80℃)を試験しています。この温度可変風洞設備があるメーカーは国内でもめずらしく、多くは温度補償の理論により補正しています。

温度可変風洞の作り出せる温度域は5~80℃ですので、低温(氷点下)の風が風速センサーにどのような影響を与えるのかは今までは試験できませんでした。そこで、北海道大学低温科学研究所の低温風洞を用いて、低温(氷点下)域での風速センサーの温度補償試験を実施しました。
 
◆ 温度補償とは
一般に熱式風速計では、センサー部が常に一定の温度になるように、フィードバック回路を用いて制御されています。風速の高低によって、センサーから奪われる熱量(放散熱量)は変化します。熱式風速計は、この放散熱量を風速値に換算しています。しかし、風温が変化した場合、同じ風速でも熱放散量は変化してしまいます。アネモマスター / クリモマスター風速計には、風温が変化しても風速が変化しないような温度補償回路が設けられています。これは検出ブリッジ回路のもう一辺に、温度によって抵抗値の変わる素子(温度補償素子)を用いたものです(図.1)。
図.1 熱式風速計の動作原理
 

 アネモマスター風速計は、気流の温度変化に応じて検出ブリッジ回路の条件を変え、加熱素子(風速素子)の設定温度を変えて補償を行います。しかし、全ての風速域で一様に温度補償を行うのは難しく、若干のずれが生じます。多くのプローブは低速域で温度が上がると風速値が上がり、高速域では温度が上がると風速値が下がる傾向があります。当社製品では理論的な温度補償に加えて、実際にセンサー1本1本を温度可変風洞にて温度補償の特性を試験し補正を行っていますので、高い温度補償精度を保っています。
 
◆ 実験結果
 低温(氷点下)においての風速センサーの温度補償を確認するため、低温風洞(北海道大学低温科学研究所にて)を用いて、風速計指示試験を実施しました。実験を行った器種は、Model 6112/6141/6531/6113/6004/6804および競合A社風速計、B社風速計です。実験は計測の部屋全体を冷却して温度制御を行い、風速の基準値(超音波風速計の値を利用)と比較するという方法をとりました。その結果、実験を行った当社の風速計すべてが、低温(氷点下)においても温度補償精度を満足するという結果が得られました。以下のグラフは、それぞれの器種の温度補償精度範囲(カタログ値)と、測定温度での風速指示値を示しています。グラフ内に示される青色破線の範囲内に値が入っていれば、温度補償精度内であるということを示しています。

Model 6804はベーン式風速計ですので、温度の影響は受けませんが、比較のため、温度補償精度を[±(指示値5%+0.1) m/s]としてグラフ化しました。A社、B社の風速計については、温度補償精度がカタログに記載されていないため、仮に温度補償精度を ±(指示値5%+0.1) m/s としてグラフ化しました。

【低温環境でのご使用上の注意】
実際に使用温度範囲外の低温域で風速計をご使用になる場合は、本体液晶が薄くなる、電池寿命が短くなる、ケーブルの硬化、結露による故障などが起こる可能性がありますので、充分にご注意ください。